「あれ?関節が痛い…」 という方は乾癬性関節炎(関節症性乾癬)かも?


●乾癬性関節炎の一般的な症状について紹介します。

●乾癬性関節炎は、関節リウマチとは異なります。

●適切な診断と治療で症状を改善していきましょう。

※乾癬性関節炎と関節症性乾癬は同義語です

乾癬性関節炎とは

乾癬の一種である乾癬性関節炎という疾患です。乾癬性関節炎では乾癬の諸症状に加えて、関節の痛み、腫れ、こわばり、変形などが生じ、主に手と足の指の関節で症状がみられます。他にアキレス腱やかかとの腱の付着部、爪も病変が生じることの多い部位です。

乾癬にかかっていても必ず乾癬性関節炎を発症するとは限らず、皮膚症状が強いために関節の症状が現れるということもありません。日本では乾癬の患者さんの14%1)が乾癬性関節炎と診断されており、徐々に患者数が増加傾向にあります。乾癬性関節炎を発症しやすい年齢は25~30歳で、男女の発症率はほぼ同じです。乾癬性関節炎の多くの患者さんは、初めに皮膚症状が現れ、後から関節の症状が出てきます。乾癬性関節炎の症状が現れるのは皮疹の発生から数ヵ月後の場合もあれば十年程度経過してからの場合もありますが、皮膚症状と同時に発症したり、関節症状のみ現れるケースもあります。

末梢関節炎

関節リウマチと異なり、一般的に左右非対称に症状か現れます。もっとも多く腫れや痛みが出るのは、手足の指先の第一関節です。症状が長く続くと、関節の変形をきたしてしまいます。

脊椎炎

腰や背中、また首筋などに痛みやこわばりが現れます。

指炎(指趾炎)

手足の指全体が腫れあがります。この炎症が長く続くと、指の関節破壊をきたすこともあります。

付着部炎

乾癬性関節炎のうち、アキレス腱や足底部など骨に腱や靭帯が付着する部位の炎症のことを「付着部炎」と呼びます。

関節リウマチとの違い

乾癬性関節炎は関節の腫れ、痛み、こわばりなど関節リウマチと似た症状が現れる疾患ですが、関節リウマチとは異なります。乾癬性関節炎では関節リウマチで陽性反応を示すことの多いリウマトイド因子が陰性です。また、関節リウマチでは第2関節や指の付け根の関節に炎症が起きやすいですが、乾癬性関節炎では第1関節や第2関節に痛みや腫れなどの症状が現れます。さらに、関節リウマチと比べて乾癬性関節炎は症状の出る部位が非対称のことが多く、炎症の生じる関節の数が少ないのが特徴です。

乾癬性関節炎の診断と治療

乾癬性関節炎は、乾癬に罹患したことがあるか、家族歴、皮膚や関節症状の確認、血液検査、X線、MRIなどの画像診断を行い総合的に診断します。既に乾癬を患っている人に、乾癬性関節炎の典型的な関節の症状が現れた場合は比較的容易に判断できますが、皮疹よりも関節症状が先に出現した場合などは診断が遅れることがあります。

乾癬性関節炎の治療では、皮膚症状に加えて関節症状の軽減を図り、日常生活に影響を及ぼさないようにすることが重視されます。皮膚症状に関しては、ステロイド外用薬や活性型ビタミンD3外用薬などの外用療法、光線療法などが用いられます。関節症状に対しては、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の服用が推奨されていますが、3~6ヵ月間使用しても改善が見られない場合や症状が重い場合には生物学的製剤を用いることもあります。

乾癬は一般的に皮膚科で診療を受けますが、乾癬性関節炎ではリウマチ内科や整形外科の受診が必要なケースもあります。

乾癬性関節炎は通常の乾癬と同じようにストレスで悪化すると推測されています。長期間の治療は辛いものですが、なるべくストレスを溜めずに根気よく続けていくことが大切です。

1)THE JOURNAL OF RHEUMATOLOGY,42,8,1439-1442,2015